新人4人が出馬表明するが,実際には,元下関市長で自民公認の江島潔氏(56)=公明推薦=に,民主党元衆院議員で元法相の平岡秀夫氏(59)が無所属候補として挑む構図である。
しかし,平岡氏の「反自民勢力の結集」を訴える戦術は裏目となっており,このままでは民主党を含む野党は存在意義を問われかねない。
「右翼化,新自由主義化を進める世襲政治家集団となってしまった自民党が一大勢力として存在する。それに対抗すべき政治勢力が必要だ。穏健保守から中道,リベラルまで反自民勢力を結集したい」
平岡氏は3月21日の出馬表明会見でこう訴えた。同席した民主党の海江田万里代表は推薦にとどめた理由を「平岡氏の強い意向に賛意を示した」と説明した。
だが,多くの有権者はそう受け止めてはいない。平岡氏は支持率が10%に満たない民主党の公認を受けるのはマイナスだと判断したに決まっているし,海江田氏も「閣僚経験者が党公認で惨敗すれば,民主党の凋落傾向に歯止めがかからなくなる」と考えたに違いないからだ。
案の定,事態は平岡氏の思惑と逆の方向に進みつつある。民主党公認を断ったことにより,従来の民主党支持層が崩れ始めたのだ。
その最たるものが労組票だろう。連合山口は3月26日の執行委員会で平岡氏を「推薦」ではなく「支持」にとどめた。
連合関係者は「平岡氏の無所属出馬に『なぜ民主党ではないのか』という声が上がった。候補選定の出遅れも響いた。傘下団体に連絡し,支援態勢を調整する時間がない」と説明するが,連合は通常「支持」という選挙対応はない。要は「邪魔はしないが,支援もしない」ということだ。
労組の動員力を失ったことは手痛い。民主党の細野豪志幹事長は3月31日,下松市を訪れ,平岡氏の支援を訴えたが,100席ほどの会場は空席が目立った。平岡氏が事前にツイッターに「時間的余裕がなく一般の方への案内が十分にできてません。都合のつく方はぜひご参加下さい」と書き込んだことからも陣営の脆弱さをうかがえる。
さらに,野党共闘も広がらない。
日本維新の会,みんなの党は静観を決め込み,推薦を決めたのはみどりの風だけである。社民党さえも「政策がすべて一致するわけではない」と支持にとどめた。
そこで,焦った平岡陣営は「脱原発」を前面に打ち出し,先の衆院選で日本未来の党公認で山口1区から出馬・落選した飯田哲也氏らが代表世話人を務める反原発団体の支援を取り付けたが,
これにより電力総連など民間労組の態度をますます硬化させた。菅直人元首相が3月31日に上関原発計画がある上関町を訪れ,平岡氏支持を訴えたが,これも逆効果の反応であった。
一方,江島氏も盤石とは言い難い。下関市長を4期務めたとはいえ,県の東部,中部での知名度はまだまだ低いからだ。
にもかかわらず自民党系組織は内閣の高支持率もあって楽観ムードが漂い,エンジンがかからない。地元・下関市でも,首相の後援会は「首相に絶対を恥をかかせられない」と躍起だが,首相の支持者らは「かつて首相に砂をかけた人だし…」と今ひとつ熱が入らない。
20年前の平成5年に首相が衆院旧山口1区から国政に初挑戦した際,江島氏が日本新党公認で対抗したことへの遺恨はなお消えていないのだ。
さらに,江島氏には, 談合・癒着疑惑だけでなく,報告がきちんとされない海外・国内出張も多く,さらに自らが妻を訴えた離婚訴訟もあって,女性層が離反,結局,再選を断念した経緯がある。
平岡氏は脱原発と反TPPを鮮明にしていて,これが徐々に地元の支持を広げているが,江島氏が自民党の衆院選の勢いのまま行くのだろうか。注目の選挙である。
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