2013年4月7日日曜日

NHK朝ドラ「純と愛」不発-脚本家は、「家政婦のミタ」遊川和彦だったが

先月30日に放送を終えたNHKの連続テレビ小説「純と愛」。期間平均視聴率が、関西地区で15・9%と、過去5作品に比べ低調だった。脚本は、「家政婦のミタ」の最終回で40%という驚異的な数字をたたき出した遊川和彦さんだっただけに、関係者の思いは複雑だ。




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“ミタの亡霊”に取り憑かれたNHK、「純と愛」視聴率15・9%の期待外れ



■高齢者の支持は得られなかったが…

 期間平均視聴率が15・9%(関西地区)というのは、実は歴代朝ドラの中では、驚くほど低い数字というわけではない。関西地区の史上最低は平成21年度の「ウェルかめ」の10・8%、次いで同年度「つばさ」が11・3%を記録している。

 その翌年度、転機が訪れた。てこ入れのため、放送時間が従来の午前8時15分から同8時に変更されたのだ。第1作の「ゲゲゲの女房」は関西地区で15・9%、「てっぱん」16・2%、「おひさま」16・5%、「カーネーション」19・6%、「梅ちゃん先生」18・5%と、順調に数字を伸ばしてきた。しかし、「純と愛」は“改革後”の5作品の中では「ゲゲゲの女房」に並ぶ最低となったのだ。





 15・9%という視聴率に対し、NHK大阪放送局幹部は「高いとも、低いとも言えない数字」とした上でこう評価する。

 「年代別視聴率をみると、前作『梅ちゃん先生』と比べ、今作は70代以上の高齢者層の支持が低かった。だが、もともと朝ドラを見ない30、40代の男性の支持は多かった。トータルでは前作や前々作と比べて下がったが、挑戦的な意味合いの作品でもあり、これからNHKが取り込んでいきたい若い世代の支持が得られた」





■“脱清純派” ユーモラスなキャラ設定

 脚本家の遊川和彦さんは、鳴り物入りで朝ドラに迎えられた。平成23年、読売テレビ系のドラマ「家政婦のミタ」の最終回で、関西地区の平均視聴率36・4%(関東地区40・0%)という高視聴率をマークしている。「清純でひたむきな従来のヒロイン像を覆す」という発言に、ますます期待が高まった。

 そして生まれたのが、理想のホテルづくりを目指して奮闘するヒロイン・純だ。一本気で無鉄砲。思ったことはすぐ口に出す性格で、ホテル客から殴られたり、同僚から疎まれたり、周囲からどこか浮いた存在だ。

 異色のヒロインに加え、相手役の風間俊介さんが演じる愛(いとし)は、人の本性が見えるという超能力の持ち主。さらにその妹は、相手の本性が「匂う」ため、常にマスクをつけているという、どこかSFっぽくもあり、荒唐無稽な設定だった。





■視聴者から「愛のムチ」

 NHKに寄せられる意見も、「面白いからがんばって」という意見の何倍も「なんでこんなドラマをやるんだ」という声が多かったという。山本敏彦チーフプロデューサーは、「番組を見ていてくれるからこその意見で、エールでもあると思っている。遊川さんが、ある意味大胆にドラマの新しい世界観を切り開くために書いてくれた作品だった」と話す。

 一方、コラムニストの青木るえかさんは、「ストーリーにリアリティーが感じられなくて、作り込んだキャラクター設定に違和感を覚えた」と話す。小説や漫画の世界ではよくある設定で、成功するパターンもあるが、「朝ドラにぶつけるのはいかがなものかと思いました。長年、朝ドラを見続けている保守層には、最後まで伴走できない人もいたのではないでしょうか」と分析する。





■何を“ミタ”のかNHK

 NHKの朝ドラといえば、「大河ドラマ」「紅白歌合戦」と並んで歴史を背負う看板番組。テレビドラマに詳しい影山貴彦・同志社女子大教授(メディア論)は、「制作サイドは、オーソドックスにいくのか、従来型を打ち破ろうとするかのどちらかになる。前々作の『カーネーション』では、ヒロインの不倫など朝ドラらしからぬ題材が、逆にスパイスとして功を奏した。今回は、荒唐無稽なストーリーに加え、空元気で叫んだりする、ヒロインの大仰な芝居など、奇をてらいながら家族愛を描こうとしたが、そのメッセージがうまく視聴者につたわらなかったのではないか」と分析する。




 また、影山さんは「NHKサイドは、“ミタの亡霊”に取りつかれていたのではないか」とも。「高視聴率をとった『家政婦のミタ』の脚本家の遊川さんを起用して、『ミタ』の恩恵を期待したのか、『ミタ』にないものを作ろうとしたのか。いずれにしても“ミタの亡霊”だった気がする。ただ、驚異的な数字の後のドラマを書くのはとてつもなく難しいものだ」と話している。

 (視聴率はビデオリサーチ調べ)


2013.04.06zakzak 

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